桃は夏の食べもの。
私も桃農家を始めるまではそう思っていました。
このページに辿り着いた方は、私と同じく「こんな時期に桃があるのか!」と思った方だと思うので、そういった方に向けて冬桃がたりを解説しようと思います。
なるべく多くの方に最高の状態で食べていただきたいので、熟度についても詳しく説明していきます。
冬桃がたりってどんな桃?
冬桃がたりは吉備路もも出荷組合で栽培が始まった冬に成熟する桃の品種です。
2019年現在、上記組合での生産戸数は35戸と少なく、夏の桃に比べて栽培難易度が高く出荷率が低いことも相まって、非常に希少価値の高い桃となっています。
冬桃がたりの味や特徴は?
冬桃がたりは小ぶりではありますが、平均糖度15度を超す滑らかな食感の香り高い桃です。
以上の特徴は追熟を適切に取った場合の印象で、買ってすぐに食べるとおそらく硬いはずです。
というのも夏の桃に比べて収穫時にまだまだ硬く、追熟させて食べるのが特徴の一つなのです。
夏の桃だと多少硬くても収穫後2~3日置けば十分柔らかくなるのですが、冬桃がたりの場合柔らかくなるのに1週間はかかります。
(今年は少し青めで採って、常温で2週間置いてようやく柔らかくなってきました。)
ただ購入した場合や贈り物として手元に渡った場合、その時点で収穫から少なくとも2~3日は経過していると考えていただいて結構ですので、あと5日は待っても良いのかなという印象です。
ちなみに冬桃がたりは夏の桃とは違い、収穫したら全量即出荷ではなく一度組合の方で一定期間貯蔵した後に随時出荷しています。
12月以降に手元に渡ったものであれば、貯蔵中に熟成が進んでいるため、購入後の追熟は11月に買う場合よりも短くても問題ないと思います。
11月の場合でも買った時点で香りが出ていて、触って柔らかければすぐに食べても美味しいはずです。
味の話に戻りますが、個人的には香りが凄いと思います。
夏の桃とは少し傾向が違うのですが、フローラルな香りが強いという印象です。
また糖度に関してもその香りと非常にバランスが取れています。
晩成の桃は糖度が上がりやすく、実のところ糖度15度越えは割とある話なのですが、これまた個人的な印象で香りが糖度に負けていると思う品種があるのも事実です。
ただ糖度が高ければ美味しいわけではなく、結局は味のバランスだと思います。
その点で適正に熟れた冬桃がたりは糖度と香りのバランスが取れた、味に文句のつけようがない品種だと思っています。
冬桃がたりは栽培が難しい!
さて、どこまで情報を出すべきかと思いますが、怒られない範囲で冬桃の栽培について説明します。
その①:まだ栽培が始まって間もないので難しい
これは当然ですよね。生産が始まって月日が経ったものはある程度栽培指針がしっかりしているので、それにのっとって栽培すれば良いものができます。
しかし冬桃がたりにはまだそれが無いので、毎年生産者は試行錯誤しながら品質の向上をはかっています。
その②:樹が病気になりやすい
冬桃がたりは夏の品種ではかかりづらい病気にかかるのです。これが非常に厄介。
かかったら最後、その樹は徐々に弱っていき、実が本当に大きくならなくなります。
その③:台風の時期に強風が吹くと袋ごと実が落ちる
冬桃がたりは9月10月の台風シーズンを乗り越え、ようやく商品となってきます。
そのためその時期に強い台風が来ると、そのたびにそれなりの数の実が落下します。
その④:立ち木性で樹が寝にくいため作業しにくい
これは少しマニアックな話。冬桃がたりは他の品種より樹が上に上に伸びていく傾向があります。
すると樹高が高くなるため、脚立もいつもより大きいものが必要になり、作業が大変になります。
また他の品種だと実の重みで年々樹が開いてくるのですが、冬桃がたりは実が小さいので樹が開きにくく、その結果として樹が立ったままになります。
それによる更なる難点もあるのですが、マニアックすぎるのでこの辺で止めます。
まとめ
本当に希少な冬桃がたり。
1つあたりの値段が高いので、消費者の方には本当に美味しい状態で食べてもらいたいというのが生産者の願望でもあります。最高の状態で食べてもらえれば、きっと値段なりの価値を分かっていただけるとも確信しています。
夏の品種だと小さいとマズい桃も多いのですが、冬桃がたりに関して言えば小さくてもハズレは無いです。むしろ熟度がネックです。
あと種が小さいので他の品種で同じ大きさの桃があれば、冬桃は可食部は多い方だと思います。
小さいものでも見かけたら是非トライしてみてください!
それではー。
コメント