どうも桃農家のgeradeausです。
SNSを見ていたら「腐った桃が入っていたから、もうこの産地の桃は二度と買わない!」という言葉をたまに見かけます。
今回はなぜ買った桃が腐ってしまったのか、腐った桃はどの程度までなら食べられるのかについて解説していきます。
この記事を読んだうえで、次もその産地で、または個人の方から買うかどうかの検討材料にしてもらえたらと思います。
農家なのでかなり詳しめに書いていきますよ!桃の腐れの記事では一番詳しいかも(笑
なぜ桃は腐ったのか
桃が腐れる原因は主に4つあります。
・エボ(桃の枝側)の穴あきによる腐敗
・ヤガ、カメムシによる虫害が原因の腐敗
・病気による腐敗
・核割れによる内部からの腐敗
これらが発送後の保管方法関係なく、経時によって間違いなく腐るものです。
ならこういったものを取り除いて発送すればいいじゃないかと思うでしょうが、その通りです。
しかし、そこには必ずヒューマンエラーが出てくるのです。
1つずつ写真を添えて取り上げてみましょう。
エボ(桃の枝側)の穴あきによる
これがエボの穴あきです。正常な桃は穴が開いていないのですが、内部の種が割れる核割れによって起こります。
画像中心、桃が枝と繋がっていたところの上下に穴が開いているのが分かるでしょうか?
この穴から雨水が桃の種の中へと入っていき、種の中で細菌が繁殖し腐るのです。
私の組合での出荷の基準は穴が1つで爪楊枝の先程度までならOKとなっているので、下の穴でギリギリOKというところでしょう。なのでこの桃は腐れのリスクがあり、常温配送に耐える正品としては販売できないのです。
ただし産地によってはもう少し基準がゆるいところもあるので、このあたりはその産地が、ひいては個人が良いものを出しているかどうかを見極めるポイントだと思います。
ヤガ、カメムシによる虫害
矢印の先の小さい点が虫害による吸汁被害です。
ヤガ(夜蛾)やカメムシが成熟期になると桃の果実を吸いにやってきます。
虫害は時間とともに黒ずみ、やがて腐れていくのですが、吸われて間もないとかすかな点でしかありません。この写真の桃は吸われてから少し経っているので、吸害痕の周りが少し黒ずんでいますが、なにぶん小さいので見落としてしまうこともあります。
病気による腐敗
病気による腐敗は主に灰星病、ホモプシス腐敗病に由来します。
この2つの病気は厄介なことに収穫間際から流通中に発病したりするので、産地の評価に関わる重大な病気です。
農薬である程度防げるのですが、梅雨が長引いて防除の適期を逃した場合などには多発する可能性もあります。
写真の桃はかなり分かりやすい部類で、実際はこれよりもっと小さな腐れの時もあるので、これもまた見落としの原因となります。
核割れによる内部からの腐敗
これも第一の原因同様核割れです。核内部で結露した水に雑菌が湧き、果実の内側から腐敗します。
しかしこの場合、エボに穴が開いていませんでした。反対に桃の頭側の種が割れていたので、外見からこれを特定するのは不可能なのです。
基本的に言うと、桃は横幅が広いものは核割れしているものが多いです。
そういった意味から推測は出来るので、ロイヤルなどの上位等級ではこういったことは少ないかもしれません。が、ある程度形が悪くても販売される下位等級のものでは、外見から判断できない腐れが出る可能性は、値段が高いものと比較して高くなると言えるでしょう。
形が良好なモノでも、このように核が割れていものも一部存在するので、ロイヤルでも全くないとは言い切れませんが。
それでも出るのがヒューマンエラー
ここまで4つ腐れの原因を紹介した中で、3つはだいたいヒューマンエラーと言えるでしょう。(流通途中での病気の発症は厳しいですが。。。)
もちろん桃農家も腐れを出したくないので精一杯選果をしています。
ただ、組合に出荷され糖度センサーを通過した桃は、出荷されるまでに3度チェックされるのです。
農家が家で粗選果を行い正品として出荷し、選果場で選果員の方がチェックを行い、最後に箱詰めされる方がチェックをするのです。
これでも出るのが腐れなんです!
もちろん個人販売されている方もいると思いますが、そいうった場合は1回のチェックの可能性もあると思います。
保管状況でも腐る
上記4つは出荷時に既に問題がある場合ですが、桃は非常にデリケートな果物です。
常温保存が基本の桃ですが、追熟はすさまじいスピードで進んでいきます。
なので桃が到着したら1つずつ腐れが無いかを確認したうえで、常温で保存しましょう。
ビニール袋など気密性が高く、熱がこもりやすい空間で保存されてしまうと、正常な桃でも非常に悪くなりやすいです。
また冷蔵していたものを常温に戻すと、結露して表面に水滴がつき、そこに雑菌が湧くことで腐る原因になります。
冷蔵庫には食べる少し前に入れることをお勧めします。(我が家ではご飯の直前に冷凍庫に入れて、食後に切ったりしてます)
腐った桃はどうする?どこまでなら食べられるの?
さて、そうしてあなたのもとに届いた桃が腐っていたらどうでしょう?
腐れの範囲次第では取り除くことで十分に食べられます。
毎日3食、3か月桃を食べ続ける私が、大丈夫な範囲をお教えします。
大丈夫な虫害・腐れ
腐れの中でも直径が1~2センチ程度のものは、その部分を取り除けば確実に大丈夫でしょう。初期の病気での腐れ、少し進んだ虫害がこれに当たります。
なんならこれくらい腐れてても取り除けば食べられます。
気を付けた方が良いレベルの腐れ
しかし種の周りまで腐れが進行していた場合、これは頂けないです。
腐れを大きめに取り除いても腐れの成分が桃全体に広がっていて、色は正常だけど味は腐れの味ってなこと多いです。
このレベルで進行していた場合、諦めた方が無難です。
あくまでも私が今まで食べた実体験なので、消費される方の健康状態を保証するものではありません。腐れたものも悪い場所を取り除いて食べていますが、今のところ体調を崩したことはないですよ!
あと桃の食べすぎについて気になるような贅沢な方はこちらの記事も参照してみてください。
桃が茶色いけど、これって腐れなの?
あとは桃を普段見ない方は分かりづらいものの説明です。
桃はデリケートなので、柔らかくなると手で押した場所がすぐに変色します。
これをアタリと呼んでいます。
真ん中の2か所の茶色いところが指アタリ、親指付近の黒いところは桃が木から落ちた時の激しいアタリです。
家庭用で販売されているものは収穫時に軽微なアタリが出てしまったものなどが多く含まれます。
なのでこれは茶色く変色していても腐れではないので安心してください。
またこれとは別に「餡入り」という現象が起きることもあります。
表皮は白いままなのですが、中が黒っぽく漉けている状態です。
(写真が手元に無いため、見つけたら掲載します。)
現象的にはリンゴの蜜と同じなので味には問題ないのですが、桃では見栄えが悪くなってしまうため、加工品でも引き取ってもらえません。
まとめ
どうでしょう。桃農家が腐れに苦心している現状を分かっていただけたでしょうか?
桃は非常にデリケートです。綺麗なものを数多く作ろうとすると適度に農薬は必要となりますし、それでも病害虫被害は必ず出てきます。
腐れた桃を見つけた場合は、この記事の原因一覧と照らし合わせなぜ腐っているのかを判断し、そのうえで今後どこの産地の桃を買うのかの検討材料にしてもらえたらと思います。
個人的にはエボ部分の穴あきが著しく大きいもの以外は、多めに見てもらえないかと思います。
ただし到着時点で腐っていたら、販売店に連絡してみても良いと思いますよ!
盆以降の桃にも美味しいものがたくさんあるので、要チェックですよ!
それでは桃を楽しんでください!
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