【荒ぶる季節の乙女どもよ。最終話(12話)感想&考察】巧みな色の比喩表現

雑記

過激な描写の1話から、青春の真っ只中の葛藤をストレートに描いてきた本作が遂に最終話を迎えましたね。個人的には2019年の夏アニメではトップの出来だったと思います。

 

さて本作は文芸部ということもあり、OPの歌詞から作品全体に渡り詩的な比喩表現に溢れていました。

最終話も多くの比喩が使われており、ひとつひとつ紐解くことによってより深く作品を楽しむことが出来ると思います。

 

ということで、最終話「乙女心のいろいろは」の感想&考察、また作品全体のレビューをしていきたいと思います。

※がっつりネタバレが含まれるので未視聴の方は、是非視聴後に読んでみてください。

 

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最終話(12話)のあらすじ

り香の退学処分を撤回させるため、山岸先生を人質にとって学校に立てこもる文芸部だったが、校長たちは意外にも文芸部を残しその日のうちに解散。

反対に先生から連絡を受け、り香&天城と泉は学校に駆け付けた。

 

泉が来ることを知り、泉への告白を決心する菅原氏だったが、百々子は自分の告白が菅原氏の告白決心のトリガーになったことを知り激昂する。

百々子を鎮めようとする菅原氏は説得の中で泉への気持ちを叫んだが、タイミング悪く泉にその想いを聞かれてしまう。

百々子に菅原氏の好意を断ることを迫られた泉は「好きなのは和紗だけど、性的欲求を感じるのは菅原さん」と言ってしまい、ひと葉、り香&天城ペアも加わり大騒動に。

 

事態の収束を図るため山岸先生が「個々の心情表現をベースとした色鬼」を提案します。

色鬼によって百々子と菅原氏はお互いの正直な気持ちをぶつけ合い、和紗と泉もお互いに幼馴染だったからこその家族愛に似た愛情があり、いつかは結ばれたいが今性欲で関係を壊すのが怖いと打ち明け解りあうのでした。

 

男性陣を全て返して学校で5人だけになった文芸部メンバー。

疲れて真っ白になったといいながらも、お互いに抱く白のイメージを話しながら最後の作業に取り掛かります。翌日学校に来た校長たちは校舎を観てびっくり。校舎は白い紙に様々な色で書かれた、り香の退学を撤回させるための大きな垂れ幕で埋め尽くされていたのです。

 

そして時は過ぎ、それぞれの物語は進んでいくのでした。

 

最終話の感想&考察

見事にまとめてきたの一言に尽きます。

り香の退学処分、百々子から菅原氏への告白、菅原氏の泉への気持ち、ひと葉の山岸先生の関係、和沙と泉のわだかまりとすべてのキャラクターが何かしらの問題を抱えたまま最終回に入りました。

正直最終話だけでどうまとめるんだろうかと思っていたのですが、想像を超えるくらい最後温かい気持ちになれました。

色の比喩についての考察

最終話のタイトル「乙女たちのいろいろは」でもわかる通り、今回の話はかなり色にスポットを当てて作られています。特に色鬼から最後に至るまでの流れは秀逸でした。

まずは菅原氏が色鬼の時に指定した「わたしたちは青い群れ」。

 

もちろん青春を表した色ですが、この表現、文芸部それぞれの青春(青)が集まることによって、群青というより深い青色を連想させました。

1人1人にしっかりスポットを当てた今作は青春の群青劇、もとい群像劇っていう感じで少しギャグも含めたメタファだったら面白いなと感じています。

 

その後の和紗が逃げているシーンでも、色の比喩がありました。

青=青春

黒=(青春で)先や周りが見えない状況

色鬼の最中、学校の暗闇の中で和紗は「ずっとこんな風だった。あの日、あの言葉(菅原氏のSEX発言)からずっと私はあたりが良く見えない。暗いところに居た気がした。」とモノローグで語っています。

その直後月明かりで青く照らされた瞬間に「暗がりじゃない、私たち、ずっと青の中にいたんだ」と、自分が青春のさなかにいることに気が付いたのです。つまり今までは夢中すぎて自分が青春していることに気付かなかったのでしょう。

 

最終話最後の和紗の「入った」の一言は、自分が青春の真っ只中にいることを自覚し、先や周りの見えない状況に入ることを覚悟した和紗の心情を暗示しているのだと感じました。

「入った」の台詞は今作のテーマである性を連想させる発言で、1話の最後のシーンとも対比になっていて、これ以上ない終わり方だったと思います。

 

そして物語終盤の「白」の描写。

り香の純潔の白は大人になることで汚れるかという問いかけに和紗は、

「そうは思いません、だって今までこの校舎を牛耳っていた青が、白い光に照らされたら色だらけになりました。」

と答えます。

ここでは

・朝日によって照らされた校舎が、文芸部メンバーが書いたカラフルな幕で彩られた

・青春で恋をすると色んな感情が浮かび上がり豊かになる

という物理的な面と精神的な面を組み合わせた比喩になっている気がします。

 

そしてその後の台詞につながります。

「これだけの色が青の下に眠ってた。染まっていくんでもない、汚されていくんでもない。新しい気持ちに照らされると自分でも気づいていなかった、もともと自分が持っていた色がどんどん浮かび上がってくるんだ。」

 

もともと人は個性があり、青春を経験することでより人間としての色が増していく。

性について正面から描いた「荒ぶる季節の乙女どもよ。」のメインテーマはこれだったんじゃないでしょうか。

 

ひと葉&山岸先生ペアの結末

最終話まで最も荒ぶっていたひと葉。

最終話前半でも人質が犯人に好意を抱いてしまう「ストックホルム症候群」を例に挙げて、まだ好きな気持ちがあることを告げていました。

 

このペアも色鬼の最中に会話をしていて、その中で山岸先生はひと葉に「迷惑なくらい面白い」と伝えました。今まで山岸先生に対して何一つ思い通りにいかなかったひと葉でしたが、ホテルのシーンで「せめて面白がらせたい」行動したことが遂に叶いました。

しかし自分が山岸先生に対し思い通りにできることは、その「せめて」でしかないと気づき、再び生徒と教師の関係に戻ろうとしたことが「志半ば適当に満足させないでください。面白くないですよ、山岸先生」に詰まっていたと思います。

 

最後はCパートで山岸先生と富多先生の結婚式の余興の準備をするひと葉が描かれていて一見ハッピーエンドに見えますが、最後に少し切なそうな表情と台本がミロ先生、富田先生結婚式余興とかいてあるあたり、先生には見せないけど心の中では好きでい続けているんだろうなという風に受け取れます。

 

り香&天城ペアの結末

泉の問題発言に紛れて天城の「(他の女の子の)胸を触ったことがある」発言ですったもんだしていた二人。

色鬼の最中も二人で教壇の後ろに隠れて話を続けていました。

キスもしたことがあるということで、嫉妬心を抱いたり香でしたが、最後は天城がり香の額にキスすることで仲直りしました。

Cパートでは大学進学後も付き合っている姿が描かれました。

ギャルの子とも交流を続けている姿も映り、少し温かい気持ちになりました。

 

百々子&菅原氏の結末

色鬼を通して百々子は、菅原氏が全力で自分の想いに応えてくれた上で、やっぱり「友達」でいたいと考えてくれていることを知りました。

抱きしめた後の「菅原氏、鬼ね!」には、全ての想いをぶつけてスッキリと諦めた百々子の心情が良く出ていたと思います。声優さんの演技も良かったです。

 

Cパートでは友達に戻った姿が描かれました。

 

作品全体のレビューとまとめ

文芸部らしい詩的表現が多く、1度見るだけでなく何度か見返すことでさらに細かいテーマや心情に気付かせてくれる作品でした。

衝撃の1話から始まりどう展開していくのか、1人1人の恋愛模様がどう進んでいくのか、毎週本当に楽しみでたまらなかったです。

性というテーマに真正面から向き合い、見事にここまで爽やかに仕上げてきたなと感動しています。

 

また全体通してOPの歌詞との呼応性の高い作品だったなと感じました。

度々変わる台詞も良かったですし、本当に毎回飛ばせないOPでした。

 

岡田麿里作品としては本当によくまとまっていたと思います。

フラクタルは全体に渡るふわっと感、あの花は途中までよかったけど最後やっぱり雰囲気でまとめてしまった感があってモヤっとしていたのですが、この作品に関してはあの花にもあった青春らしいドタバタ感を引き継ぎつつも、1人1人の結末を見事に描き切ったと思います。

群像劇を丁寧に描くことによって、誰もが経験したであろう葛藤に溢れる青春時代を回顧して、どこかに自分を投影できる内容になっていたんじゃないでしょうか。

 

みなさんはどう感じたでしょうか?

私としてはおススメできる青春アニメ入り間違いなしです!

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